Poseidon

海洋リテラシー
学習プログラム

 海研では、その地域特有の海洋環境を学ぶ海洋教育プログラムPoseidon(Program of study encouragement, inquiry, diversity and ocean)を開発しています。

 Poseidonには4つのグループ17のアクティビティがあります。
 それぞれプログラム実施時に使用する教材も開発しますが、学習する人たちの参加体験を促し、記憶に残ることが大切であると考え、五感を刺激するよう工夫し、発達段階に合わせて教材で用いる言語や情報量に配慮しています。また、繰り返し継続的に使えることや、実施場所への運搬がしやすいこと、使った後の補充がしやすいことなど教材として必要とされる要件を独自に定めて運用しています。

1.サンゴ礁学習プログラム

アクティビティ名 学習のテーマ
サンゴのテリトリーウォーズ サンゴの生態、環境問題
南の島の探検隊 島の成り立ち
出会いはサンゴ礁ダイバーシティ 生態系の多様性
森で海を考える 森と海の関係
ワンダーマングローブ マングローブ探求
シーグラスリサーチ 海草の分類

2.寒流の海学習プログラム

アクティビティ名 学習のテーマ
燃えるロッキーショアを守れ! 磯焼け
昆布探偵シーウィード 昆布の分類
海藻かるた 海藻の分類
サーモン・ラン(鮭の回遊) サケの生態
イカす、味見天国 イカの理解

3.暖流の海学習プログラム

アクティビティ名 学習のテーマ
イルカ調査隊 イルカの個体識別
その魚の正体を探れ 魚の分類・同定
カレッタ、カレッタ ウミガメの生活史
潮の色、いろいろ 赤潮・青潮
トビウオのように 環境適応

4.ひとつの海学習プログラム

アクティビティ名 学習のテーマ
フロート&バラスト 環境問題

アクティビティ概要

サンゴのテリトリーウォーズ

サンゴの生態的特徴や環境変化との関係について学びます。日本で400種を超えると確認されているサンゴは種によって成長に特徴があります。成長の早いものや遅いものがあり、また他の種のサンゴとも争います。サンゴの成長には、自然環境や、人為的なものなどさまざまな環境要因が影響しますが、影響のしかたも種によって違います。生息域を取り合う「テリトリーウォーズ」というゲームを通して、この特徴や関係を学び、サンゴの保全にとって必要なことを考えます。

サンゴのテリトリーウォーズ ゲーム中の写真

南の島の探検隊

サンゴ礁の島を地理学的に捉えて、その成り立ちや人の生活とのつながりを考えます。グループで、サンゴ礁の島の地図づくりをおこないます。

南の島の探検隊の写真

出会いはサンゴ礁ダイバーシティ

サンゴ礁は、海の熱帯雨林とも称される多様性(ダイバーシティ)に富んだ場所です。多様性とは何か、生物が多様であることはなぜ重要なのかを考え、サンゴ礁マッチングカードを使った相手探しアクティビティから、多様な生物たちが何らかのつながりを持って生態系を作り出していることを理解します。つながりが、豊かな多様性の源であることを学ぶとともに、この生態系を脅かす多くの問題が地球に起こっていることを知り、自分たちに何ができるかを考えます。

森で海を考える

サンゴ礁域における森と海の関係、人の暮らしが与える影響について学びます。実験を通して、サンゴ礁域で森が果たす機能や、森と海の関係について理解します。森と海の間に人の生活があることに目をむけ、海への影響を軽減するにはどうしたらよいかを考えます。また実験とは、何らかの予想や仮説を検証するためにおこなう手法であることを学びます。このアクティビティは、海が見渡せる山へのトレッキングの事前・事後学習として活用するのに適しています。

森で海を考えるの写真

ワンダーマングローブ

塩分を含んだ海水でも育つマングローブの不思議な特徴に着目します。マングローブが生育する海水と淡水が混ざる場所では、潮汐時にどんな現象が起きているのでしょうか。そんな中でマングローブはどういう生き方をしているのか、実験を通してその機能を理解します。種の識別トレーニングゲームもおこなって、観察眼を養います。

シーグラスリサーチ

海草は、海の中で生息する種子植物です。サンゴ礁の構成要素のひとつであり、海草藻場と呼ばれる海草の広がった場所は、さまざまな生物を育む重要な場所です。海草にもいくつかの種類がありますが、識別するには細かい観察が必要です。数種類の海草サンプルを見分けるアクティビティを通して、分類できる観察力を養います。

燃えるロッキーショアを守れ!

日本の沿岸海域では「磯焼け」が問題になっています。これは、大型の海藻群落の消失にともないアワビなどの生物が減少する海洋生態系の変化です。漁業にも大きな打撃を与え、私たちの生活にも影響をおよぼします。磯焼けが起こる原因は、人間の行動によるものから気候変動によるものまでさまざまです。こういった要因が、磯焼けとどのように関係しているのか、どうすれば防ぐことができるのかを考えます。

昆布探偵シーウィード

昆布は海藻のひとつです。海藻には、緑藻、褐藻、紅藻があり、昆布は褐藻にあたります。昆布は生息する海域によって、少しずつ特徴が異なります。それぞれの特徴の違いを理解するとともに、昆布の持つ成分アルギン酸を抽出して、人の暮らしにどう活用されているのかを考えます。

海藻かるた

日本には、世界の中でも突出した海藻食文化があります。日本の沿岸には1,500種を超える多様な海藻が生息して「藻場」を形成し、基礎生産の場として、また生物たちの隠れ場や餌場・産卵場として不可欠な存在となっています。しかし、ワカメやコンブなどの一部を除けばほとんどはなじみがなく、海藻そのものについても理解が進んでいません。陸上の森と水中の藻場の違いや似ているところを比較しながら、海藻の基礎的な特徴や、海藻にも多様な種があることを学びます。南三陸町志津川湾に生息する海藻のうち40種以上の海藻(と海草)を題材にした「かるたゲーム」を通じて、それらの名前や特徴について学びます。

サーモン・ラン(鮭の回遊)

サケ(鮭)は、日本人の食生活にとってなじみの深い身近な魚です。サケは、「母川回帰」という能力をもとにした、人工ふ化放流・定置網という漁業形式で生産されています。サケには、遠くはベーリング海まで回遊して、数年後母川に戻ることができるセンサーが備わっていますが、この機能は完全には解明されていません。 どれだけ優れた能力なのかを体感し、身近ではあるけれども大切で興味深い生物であることを学びます。

イカす、味見天国

日本を取り巻くすべての海域にイカは生息します。亜熱帯から寒帯の海までに数種類のイカがいて、その環境に適応しています。数種のイカを異なる方法で調理して味見し、また解剖して体の機能を観察し、環境との適応関係を探ります。

イルカ調査隊

イルカは、ショーやセラピー、ドルフィンウォッチングエコツアーなど、人間との接点が非常に多く、たいへん愛されている海洋哺乳類です。日本のいくつかの地域にはイルカを食べる文化があり、イルカ漁をおこなっていますが、世界の愛護団体から厳しい批判を受け、文化的理解を育みきれない状況にあります。海洋哺乳類の生息数減少への危機感から進められている保護活動でも、その生息数をどうやって正確に把握しているのか、ほとんどの人に理解されていません。このプログラムでは、生息数を把握するための科学的な手法について理解し、生息数減少の要因を予測することを体験して、人間とのつながりを考えます。

その魚の正体を探れ

地球上に25,000種から30,000種も存在するといわれる魚類は、知られていないことがたくさんある生物です。過去数百年かけて自然科学分野で解明されてきていますが、研究過程のものも多く、今後もその探究は続きます。ここではある魚のオス・メスをテーマとした謎を解明していく研究シミュレーションによって、海の生物たちの研究や自然科学の探究がどのようにおこなわれているかを理解していきます。

カレッタ、カレッタ

ウミガメの生態には多くの謎が残っていますが、人為的な要因が産卵行動や生息環境に影響を与えていると考えられています。これらを解明し理解していくことは、ウミガメの保護だけでなく、人間の生活様式の見直しにもつながります。ウミガメの特徴や、その成長過程で遭遇するさまざまな困難について知り、また産卵調査をバーチャル体験しながら、保護のあり方を考えます。

カレッタ、カレッタ

潮の色、いろいろ

昨今、海洋にはさまざまな環境問題がありますが、中でも、かなり古い時代から続き根本的な解決に至っていない環境問題が「赤潮」です。また最近では「青潮」と呼ばれる問題も起こるようになっています。しかし、これらの現象は一般の人たちにあまり知られていません。赤潮・青潮の原因について理解を進め、これらの現象が起こらないようにするためにはどういうことが求められるのかを考えます。

トビウオのように

トビウオは、亜熱帯から温帯域の海に生息する、たいへん特徴的な魚です。時速60kmで100mも飛行できる魚は他にはいません。しかし、彼らの飛行する原理は、近代科学の飛行機の原理と大きく変わるものではなく、紙飛行機を使った実験を通して飛行原理を理解するとともに、それがトビウオの体にどう現れているのかを調べていきます。生物が持つ機能を知ることには、私たちの生活を豊かにする科学の発展につながる可能性があります。このアクティビティでは、自然界の現象を解明していくことの大切さを取り上げます。

フロート&バラスト

海に囲まれた日本にとって、海は他国とのアクセス路であり、船は重要な運送手段です。船に関わる産業は、日本の海の産業を支えてきました。近年は、船による物流活動の仕組みが、海の生態系を撹乱する要因のひとつとなっていることもあり、船の原理を理解することは大変重要になっています。物理の基本法則「アルキメデスの原理」の一事象として船が浮くことを理解し、効率的な移動と安定との関係について実験します。そして、「重し」として使われているバラスト水が外来生物を運ぶひとつの原因になっていることに気づき、そのことに社会としてどう対処しようとしているかを学びます。